東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)24号 判決
一、油容器の構造の限定について
いずれも成立に争いない甲第一号証(本願実用新案出願公告昭和四一年第二二四八号公報)、同第四号証(引用例公報)、乙第一号証(手続補正書)、同第二号証(補正却下の理由の通知書)、同第三号証(補正の却下の決定)に弁論の全趣旨を総合すると、つぎのように認められる。
本願考案は、変圧器の呼吸作用による絶縁油の劣化を防ぐコンサベータ装置に関する先発明の改良を目したものである。そして本願考案の明細書の記載によれば、先発明は、コンサベータ内に変圧器内の油を連通させ、その上部に接着してコンサベータ外の大気と連通する合成ゴムの空気袋を設けた構造により、変圧器内の油の膨張収縮に応じて合成ゴムの空気袋を収縮・膨張させ油が空気に触れないようにした装置であるが、ゴム袋の収縮・膨張の際、その側面の一部が外函の側壁に吸着して、動作が片寄り袋に皺ができ、その皺の伸縮が不均衡となつて材料に張力がかかり、損耗・漏洩が生ずる恐れのある。欠点をあげ、その克服をはかるものとしている。そして本願考案の効果として「(1)空気および水分の浸透を著しく軽減できること、(2)袋材のどんな点にもストレスがかからないこと、(3)外函の形状を自由にし、かつ(4)その内容積の利用率を高める等の長所がある。」ことをあげている。ところでこれらの効果を実現する解決手段として、本願考案は、変圧器の呼吸作用を吸収・調整する合成ゴム袋をコンサベータ外函の内に入れ、袋の内部に変圧器の油と連通する油を収容し、その外部に圧力平衡油を入れ、圧力平衡油でゴム袋の周囲を覆い、これによつてゴム袋内にある変圧器の油と大気とを遮断するようにしたものである。ところで、合成ゴム袋(油容器)とコンサベータ外函との関連については、「合成ゴム袋を外函の底部に横置し、合成ゴム袋が油の出入にしたがつて上下に伸縮する」「合成ゴム袋の外側と外函との間に小量の油を入れ、袋の内外の圧力を平衡させる」「合成ゴム袋が常にこの油の油面以下にある」「コンサベータ外函4内に合成ゴム袋1を収容し」「合成ゴム袋1の外側に、これらを常に油面下に没するに足る量の圧力平衡油5をコンサベータ内に入れてある」「合成ゴム袋1の‥‥‥したがつて全部浮遊状態にある」という記載があるだけである。
これらの記載を先発明との対比における本願考案の目的・効果・その解決手段と関連させて検討してみても、登録請求の範囲中の「油容器1と外函4との間の空隙」なる文言は、先発明における、大気に連通する空気収容の合成ゴム袋に代えて、変圧器中の油に連通する油を収容する合成ゴム袋(油容器1)とし、これを外函4内の圧力平衡油に浮遊させることによつて、コンサベータ外函4の側壁と触れないようにし、その伸縮によつて、変圧器内の油の膨張収縮を吸収・調整し、大気との絶縁を一層完全にして絶縁油の劣化を防止しようとした、本願考案の構成を説明する表現の一部と解する外なく、とりたてて「コンサベータ外函4の寸法より僅かに小さく」というところまで油容器の形状を限定したものとはいい難い。
また「上下に伸縮する」という文言について同様に検討してみても、合成ゴム袋(油容器)の伸縮運動に関しては、コンサベータ外函との関連についてあげた前記各記載のほか明細書中に何ら説明はない。従つて、この文言は前記のような本願考案の構成において、合成ゴム袋(油容器1)が、圧力平衡油中に浮遊状態にあつて、上下に伸縮することを表現したものとするほかなく、ことさら「上下の面が水平を保ち、周辺部のみ皺曲して」上下に伸縮する構造を表現しているとは解することができない。
ちなみに原告らは、昭和四二年七月七日、審査の段階で本願考案の請求範囲減縮を目するものとして、登録請求の範囲中に「コンサベータ外函4の寸法より僅かに小さく、上下の面が水平を保ち、周辺部のみ皺曲して」なる本訴で構造上の特色として主張するところと同旨の文言を挿入する補正を行つたところ、このような油容器の構造は、実用新案出願公告昭和三二年第四九三四号公報に記載され、公知であることを理由として補正却下されたのに、何らこれに対して不服申立をしていない。この経過も前記認定を裏付けるものといえよう。
以上のとおり原告の主張するような「コンサベータ外函4の寸法より僅かに小さく,上下の面が水平を保ち、周辺部のみ皺曲して上下に伸縮する」油容器の構成が本願考案の要旨であるとは認定することができないから、この点に関する原告らの主張は採用できない。
二、作用効果について
前記認定のとおり、原告らの主張する油容器の構造上の特色は要旨外の事項に属するし、明細書中、その主張のような作用効果の記載も見当らないので、作用効果に関する主張も採用するわけにはいかない。
三、結論
そうすると本件審決には原告らが主張するような違法はなく、原告らの本訴請求は失当であるから棄却する。
変圧器外函の上にコンサベータ外函を取り付け、変圧器外函内の油と連通する油を収容し、かつ上下に伸縮する油容器をコンサベータ外函内に入れ、外函内に上記油容器と外函との間の空隙を満たす圧力平衡油を入れ、外函の上部内側に空間を形成し、外函の上面に外気呼吸管を設けて成る油密封容器の圧力平衡コンサベータの構造。